2024.03.05

あい駒形クリニックの訪問診療|在宅緩和ケア

皆さん、こんにちは。
最近デスクに観葉植物を置きました、あい駒形クリニック常勤医の高橋秀行です。
本日は当クリニックで実施している在宅緩和ケアのお話をしたいと思います。

緩和ケアとは

そもそも、緩和ケアとは何を指すのでしょうか?
平成28年に改正されたがん対策基本法では、緩和ケアについて「がんその他の特定の疾病に罹患した者に係る身体的若しくは精神的な苦痛又は社会生活上の不安を緩和することによりその療養生活の質の維持向上を図ることを主たる目的とする治療、看護その他の行為をいう。」と定義されました。
この定義について、いくつか注目すべき点があると思います。
一つは対象者が「がんその他の特定の疾病」に罹患した者とされたことです。
緩和ケアというと、がん末期の方に対するケアというイメージが強いですが、心不全や呼吸不全など他の疾患でも緩和ケアを必要とする患者さんが多くいらっしゃいます。
このため、がん対策基本法において、がん以外の疾病についても言及したことは、大きな意義があることだと思います。
また、身体的な苦痛に限定せず、精神的な苦痛、社会生活上の不安など、緩和ケアを必要とする方が直面する多くの困難について幅広く定義したことも、国として全人的な緩和ケアを推進するというメッセージであると感じます。

在宅緩和ケア

私が医師になった頃は、それまで治療を受けていた基幹病院で最期を迎えられる患者さんが少なくありませんでしたが、近年では最期の時を自宅や施設で迎えられる方が多くいらっしゃいます。
国の方針としても、老年人口の増加を受けて、地域における医療・介護の関係機関が連携して、包括的かつ継続的な在宅医療・介護を提供することが重要とされています。
このため緩和ケアの領域においても、住み慣れた家や入居施設で、療養生活の質を落とすことなく最期の時まで過ごせるような在宅緩和ケアを提供することが、求められています。

あい駒形クリニックの取り組み

こうした背景を受けて、当クリニックでも訪問看護師やケアマネジャー、訪問薬剤師をはじめ、多くの職種と連携しながら在宅緩和ケアに取り組んでいます。
上記のように、緩和ケアとは患者さんの苦痛や不安を緩和する治療、看護、その他の行為を指します。
苦痛といっても、がんに伴う痛み、心不全や呼吸不全に伴う呼吸苦、腹水貯留や腸閉塞に伴う腹部膨満感といった身体的苦痛や、疾病に伴う様々な制約による精神的苦痛など、患者さん一人一人が異なる苦痛を抱えていらっしゃいます。
我々在宅診療所には、患者さんの状態を適切に評価し、抱えてらっしゃる苦痛の種類や状態、原因を診断し、適切な方針を立案することが求められています。

医療用麻薬のお話

がんに伴う痛みや慢性疼痛等に対しては、必要に応じて医療用麻薬を用いることがあります。
内服が可能な方であれば内服薬、難しい方であれば貼付剤と坐薬、必要量が増加してくれば注射剤等、医療用麻薬にも様々な種類があり、患者さんの状態に応じて適切な種類を選択する必要があります。
また、医療用麻薬に関する誤解をお持ちの方もいらっしゃるので、医療用麻薬に関するパンフレットをお渡しし、適切に用いれば安全な薬であることを丁寧に説明するよう心掛けています。
医療用麻薬には呼吸苦を和らげる作用もあり、上手に用いれば非常に有用な薬です。
一方で、便秘や吐き気といった副作用もあり、副作用の管理が大切です。
当クリニックでは、多くの連携薬局さんと協力しながら、安全かつ十分な量を投薬出来るよう、日々取り組んでいます。

点滴のお話

緩和ケアが必要な患者さん、特に最期の時が近い方に対して点滴を行うかは、医療従事者の間でも議論があります。
点滴はせずに自然な形で看取るという選択もあれば、延命効果を期待して、もしくは患者さん・ご家族のお気持ちを尊重して点滴を行うという選択もあります。
当クリニックでは、一律にする・しないとは決めずに、患者さんやご家族と十分に話し合ったうえで、旅立つ患者さんも、残されるご家族も、双方が後悔のない選択が出来るよう、サポートする方針を取っています。
末梢血管からの点滴は原則的には水分補給であるため、その延命効果は限定的です。
それでも、点滴を行うことで患者さんとご家族が良い時間を過ごせるのであれば、決して無駄ではないと個人的には思います。

以前に訪問していたお宅で、ご家族が点滴を続けるべきか、止めるべきか、最期まで悩まれていたことがありました。
その時「必ずしも点滴=延命=悪いことではなく、お別れした後も前を向いて生きてゆかなくてはいけないご家族が、後悔されない選択をすることも大切です」とお伝えしたところ、心のつっかえが取れてよかったと、涙しながら仰っていたのが、今でも印象に残っています。
緩和ケアに決して正解はないのだなと、改めて実感した次第です。

あい駒形クリニックの在宅緩和ケアのこれから

当クリニックの患者さんは日々増加しており、それに伴い在宅緩和ケア必要とする方も増えています。
これからも、連携施設の皆様と協力しながらワンチームの在宅緩和ケアを提供出来るよう、日々精進してゆきたいと思います。


最後までお読み頂き、誠にありがとうございました!

髙橋 秀行
この記事の執筆者
あい駒形クリニック 医師

髙橋 秀行 (たかはし ひでゆき)

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