先日、前橋赤十字病院さんの院内研修で、講義の機会をいただきました。
「病院から在宅へ、切れ目のない医療・看護、訪問診療の実際」をテーマとした講義には、新人ナースを卒業し、ステップアップを目指す頼もしい看護師さんや、退院支援の現場に関わる看護師さんが参加してくださいました。
訪問診療の実態
研修では1時間半もの持ち時間をいただき、あい友会やあい駒形クリニックで日々実際に行っていることを、事例を挙げて紹介しました。
例えば、病院では当たり前にできることが、在宅医療ではそう簡単にはできないこと。
「点滴を開始します!」と病院で言えば、薬剤や物品は瞬時に準備できますが、訪問診療ではそうはいきません。
調剤薬局に薬剤の有無を確認し、なければ取り寄せてもらったりして、ひと通り揃うのは早くて翌日の午後なんてことは多々あります。
輸液のポンプも同様です。
さらに点滴台も、患者さんのご自宅にはもちろん無いので、室内を見渡し、カーテンレールやたまたまあったフックを利用するなど、家庭にあるものを工夫して利用します。
病院ならば院内に様々な職種のスタッフがいるので、直接足を運んだり内線電話をかけることで、院内でほぼ全てのことが完結できますが、在宅ではそうはいきません。
訪看さん、ケアマネさん、調剤薬局さんなど、必要な方々にその都度連絡を取ったりします。
あい友会の訪問診療は医師、看護師、訪問診療アシスタントの3名1チームで行うため、医師が診察している横で看護師やアシスタントが連携先に直接連絡したり、クリニックのスタッフに調整を依頼するなどします。
訪問チームのチームワークと、地域レベルでの多職種連携が何より重要になってきます。
また、医療的な処置に関しては、入院していた病院と相談して、在宅でもできるものに調整することがあります。
さらに抗がん剤治療や輸血などは、訪問診療を行いながら病院でやっていただくことになります。
病診連携も、本当に大切です。
訪問診療の醍醐味
訪問診療では、入院中には見られない自宅での生活の様子を垣間見ることが出来ます。
患者さんが可愛がっているペットや丹精込めて育てた花々、整えられた庭、趣味の絵画など。自宅には、ご本人やご家族のたくさんの思い出が詰まっています。
それらのものを見るにつけ、「患者さん」である以前にひとりの人であることを改めて実感します。
在宅医療の実態や魅力をどこまでお伝えできたか不安ですが、病院とは違う在宅医療のイメージのひとつとなって、入院中から退院後の生活を見据えた関わりの一助になりましたら幸いです。