2024.02.06

あい駒形クリニックの訪問診療|褥瘡(じょくそう)の診療

皆さん、こんにちは。
机の上にはなるべく物を置きたくない派の、あい駒形クリニック常勤医の高橋秀行です。
これまで当院の耳鼻科往診について、耳・鼻・のど・めまい・頸部と分けてお話してきました。
今日からは、耳鼻科往診以外だけでなく、あい駒形クリニックで行っている診療の特色について掘り下げてゆきたいと思います。
本日は、当院で行っている褥瘡診療についてお話したいと思います。

あい駒形クリニックの褥瘡診療

訪問診療の対象となる患者さんは、原則的に 「居宅(施設)で療養を行っており、疾病、傷病のために通院による療養が困難な方」とされています(日本訪問診療機構HPより抜粋)。
通院が困難な方の中には、寝たきりの方も多くいらっしゃるため、褥瘡を患っている方も多くいらっしゃいます。

訪問診療と褥瘡

そもそも寝たきりの方に褥瘡が出来やすいのは何故でしょうか。
褥瘡の原因としてまず挙げるとすれば、長時間の組織の圧迫です。
寝たきりの方の場合、自力での体位変換が困難なために組織の圧迫が生じ、低酸素・低栄養状態による組織の障害をき来たし、時に褥瘡に進展します。
また、圧迫だけでなく、摩擦やズレ力が繰り返しかかることでも褥瘡が生じます。
こうした外的要因以外に、低栄養状態や加齢・むくみ・薬の副作用等による皮膚の脆弱化、糖尿病や脂質異常症等を背景とした末梢の循環不全も、褥瘡の発生に大きく影響します。
訪問診療では御高齢の患者さんが多く、上記のような要因のある方ばかりですので、寝たきりでなくても、褥瘡の発生には常に気を配る必要があります。

創傷ケアチーム、褥瘡カンファレンスの様子

あい友会と褥瘡診療

このように訪問診療の対象となる患者さんの多くが褥瘡を患っているか、褥瘡のリスクをお持ちの方ですので、あい友会では多くの患者さんの褥瘡診療を行っています。
あい友会では、褥瘡を含む創傷の診療を複数ある「専門領域」の一つと位置づけ、多職種でのカンファレンスを定期的に行い、治療に難渋する症例を中心に検討を行っています。
カンファレンスでは、あい駒形クリニックだけでなく他施設とオンラインで接続することで、診療経験の豊富なスタッフの意見を取り入れながら、治療方針を決定しています。

褥瘡診療の実際

褥瘡の予防・治療ともに、最も大切なのは原因となっている圧迫の解除です。
このために、ベッドマットレスや車椅子のクッションを見直すことが褥瘡予防・治療の第一歩です。
マットレスには多くの種類がありますが、最近では自動体位変換機能や自動圧調整機能がついた高機能エアマットレスが多く発売されており、昔のような介護者による頻回な体位変換を必要とせず、褥瘡の治療も大きく進歩しました。
こうしたエアマットレスは介護保険を利用してレンタル出来るため、褥瘡のリスクのある方には、ケアマネジャーと連携しながら積極的に利用して頂くよう心掛けています。

また、圧力やズレ力の外的要因に加えて、栄養状態や血液循環等の内的要因を改善するのも、我々の大切な役目です。
褥瘡のある患者さんでは、低栄養状態が背景にあることが多く、適切な経口栄養剤等を用いながら、栄養状態の改善を目指します。
また、末梢循環不全の原因となる糖尿病や脂質異常症を適切に治療することも大切です。

一旦出来てしまった褥瘡に対しては、適切な管理を行い、治癒までのプロセスを進めてゆく必要があります。
発生初期の段階では、ダメージを受けて壊死してしまった組織が残っていると治癒の妨げとなるため、軟膏や切除による壊死組織の除去(デブリードマン)行います。
壊死した組織が取り除かれてきれいになった後には、感染に注意しながら、組織が再生しやすい清潔で湿潤した環境を維持してゆくことが大切です。
このためには、褥瘡の状態に応じた軟膏の選択や、ドレッシング剤の選択が重要です。
組織が再生する過程では肉芽組織という皮下組織が増生しますが、皮膚の再生の妨げになる不良肉芽と呼ばれる組織が出来てしまうこともあるため、こうした組織を取り除いて適切な治癒プロセスを促すことも大切です。
こうした管理を随時見直しながら、継続的なケアを行うことで、褥瘡を治癒に導いてゆきます。

あい長野クリニックの袖山院長と共に、電気メスを用いて褥瘡治療にあたっている様子

在宅褥瘡診療と多職種連携

このように、褥瘡の診療は単に医師が薬を処方するだけではなく、環境の整備や日々の処置など多くの事を調整する必要があるため、多様な職種が関わっています。
このため我々訪問診療医だけでなく、訪問看護師、ケアマネジャー、介護師等、多くの職種が知恵を出し合い、連携することが大切です。
当院では、多くの連携施設の皆様に助けて頂いているおかげで、自宅で過ごされている方から施設に入所されている方まで、幅広い患者さんに褥瘡治療を提供出来ております。
連携施設の皆様には、この場を借りて深く御礼申し上げます。
これからも、より良い褥瘡診療を提供出来るよう、日々取り組んでゆきたいと思います。

当院の訪問診療の解説シリーズ、今後も続けてゆきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!

髙橋 秀行
この記事の執筆者
あい駒形クリニック 医師

髙橋 秀行 (たかはし ひでゆき)

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