2023.08.15

出会いのキセキをいつくしむ|家族の絵と共に過ごす、在宅という選択

皆さん、こんにちは。

夏場はくせ毛のうねりが止まりません、あい駒形クリニック常勤医の高橋秀行です。

今回は、日々の訪問診療で出会う患者さんの人生の軌跡と奇跡、そして奇蹟をご紹介する「出会いのキセキをいつくしむ」シリーズです。

第一回は、ご家族との想い出を守るために在宅医療という選択をされた方の、とある人生の物語です。

お一人暮らしをされていたご高齢のAさん(仮)は、ある時ご病気を患い、入院療養生活を送られていました。

徐々に状態は快方に向かい、退院を検討する段階になりましたが、ご病気と全身の状態を考慮すると元の生活に戻るのは難しいため、退院後は施設入所が望ましいと、病院のスタッフは考えたそうです。

しかし、Aさんは頑なに自宅に帰ることを希望しました。

病状だけを考えれば、施設入所が望ましいという病院の判断は的外れではなかったと、私も思います。

それでも自宅に帰りたいとAさんが望まれたのは、ご自宅に息づく、Aさんとご家族との物語があったからなのです。

Aさんのご自宅は、閑静な高台にある、とても素敵なお宅です。

御本人は散らかっていると仰りますが、いつもとても整理整頓されていて、見習いたいほどです。

ご自宅にお邪魔すると、立派な額に収められた素敵な油絵の数々が出迎えてくれます。

私はてっきり、絵画をコレクションするのがご趣味なのかと思っていたのですが、実はAさんのご家族が生前に描かれたものだと知り、大変驚きました。

写真だとその素晴らしさが十分に伝わらないのではないかと心配ですが、本当に立派な絵画ばかりです。

有名な画家さんだったのですか?と伺うと、無名のアマチュアだったとのこと。

とてもそうは見えない出来栄えに大変感銘を受けるとともに、ご家族様が絵画に注いでいた情熱が、今もなお絵から溢れ出てくるようです。

Aさんは、それぞれの絵にまつわるエピソードをとても嬉しそうにお話してくださります。

絵を描くために一緒に富士山を訪れたけれど、富士山と一緒に画角に収めたい枯れ木が見つからず苦労した話。能の絵に魂を込めるため、能の先生を訪れた話、等。

絵画の一枚一枚に、Aさんとご家族様との物語がたくさん詰まっています。

絵画にまつわるお話をしてくださる時のAさんは、まるでご病気を患う前に戻られたように、とても生き生きしておられます。

ご家族との想い出が詰まった絵画の数々は、我々が処方する薬よりもAさんを日々元気づけているのだなと、お話を伺うたびに気付かされます。

また、絵画だけでなく、ご家族様との想い出が息づく自宅で過ごすことが、Aさんにとっていかに大切なことなのかを思い知らされます。

病院から施設入所を勧められた際、Aさんは「絶対に家に帰りたい、自分の家を放っておくわけにはいかない」と、ケアマネジャーさんに相談されました。

そこでケアマネジャーさんがwebサイトを通じて当院を見つけてくださり、当院の情報をくまなく調べて主治医へ提示したところ、これなら大丈夫そうですねと、自宅退院の許可を頂けたそうです。

「あい駒形クリニックが往診してくれるおかげで自宅に帰ることが出来ました。本当にありがとうございます」

と、ご家族様が遺した絵画を眺めながら、嬉しそうにお話されるAさん。

無名の画家さんの絵画の数々に囲まれた、一人だけど孤独ではない、御自宅での生活。

そんなAさんの「出会いのキセキ」をいつくしみ、Aさんが御自宅で不自由なく過ごせるよう、これからもお手伝いしてゆきたいと思います。

最後までお読み頂き、誠にありがとうございました!

髙橋 秀行
この記事の執筆者
あい駒形クリニック 医師

髙橋 秀行 (たかはし ひでゆき)

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