2024.01.16

出会いのキセキをいつくしむ|在宅医療における幸せのカタチ

皆さん、こんにちは。
昼食の定番はおにぎりと豆腐、あい駒形クリニック常勤医の高橋秀行です。
今日は、私が訪問させて頂いている、とある患者さんのお話です。

ご主人と愛犬に囲まれて暮らす膠原病の患者さん

「先生、私いま、とっても幸せです」

ある日の訪問中、ユウコさん(仮)は静かに私に語りかけました。
ユウコさんはご主人、愛犬と3人で暮らしている、当クリニックの患者さんです。
膠原病のため足が不自由となり、当院の訪問診療を利用することになりました。
現在は、1日のほとんどの時間を自宅のベッドで過ごされています。
ベッドに面した窓から見える紅葉の木が季節の遷ろいを伝えてくれる、とても素敵なお宅です。
ご主人と愛犬の付きっきりの介護のおかげで、私達も安心してご自宅での生活をサポートすることが出来ています。

「とても幸せ」と言ったワケ

しかしながら、病状は決して良好とは言い難いところがあります。
膠原病のため、常に全身の痛みがあります。
お腹の調子を崩しやすく食事を十分摂れないこともあり、時に点滴を要する時もあります。
膠原病に伴う肺の障害で在宅酸素療法を行っていますが、夜間に咳が止まらなくなり苦しい思いをされることもあります。
血圧が高くなってしまい、降圧薬を複数内服していますがなかなか落ち着きません。
このようになかなか病状が落ち着くことがなく、訪問のたびに内服を調整したり点滴したりしていましたので、「いま、とても幸せです」という言葉を聴いたとき、私は頭を叩打されて目が覚めたような気分でした。
私は医師という立場で、患者であるユウコさんと接していますので、どうしても落ち着かない病状に意識が向いてしまいます。
そんな中、なんとか在宅医療で出来る最大限の治療を行いたいと考えて、日々取り組んできました。
その結果、ユウコさんを落ち着かない病状に苦しんでいる患者として無意識に捉え、幸せな生活を送る一人の女性として捉えることが出来ていなかったのです。

ユウコさんは、いつも満面の笑顔で我々を迎えてくれ、優しく気配りの出来るご主人と血統書付きの素敵な愛犬に囲まれて、窓から紅葉の木が見える素敵なお宅で生活される、とても幸せそうな女性です。
そんな当たり前のことすら、医師という肩書きのせいで気付くことが出来ていなかった自分を、とても恥ずかしく思いました。
病気は診るけど人を診ない医師というのは、ダメな医師の例としてよく挙げられますが、自分もまだまだその範疇を抜けられていないのだなと、改めて気付かされました。

本当のプライマリ・ケア医を目指して

あい友会のホームページには、以下のように書かれています。

あい友会のミッション

人間の尊厳の回復と維持のため、価値的な医療・介護サービスを提供する

患者さんがその人らしい人生を全うできるように、ナラティヴ・スペシャライズド・サステナブルなアプローチをとおして、クルーとしての役割を果たしていく。

自分は医師として何が出来るかということに捉われるあまり、ユウコさんがユウコさんらしい幸せな人生を過ごせているか、という視点が欠けていたように思います。
病気を診断し治療するという行為は、医師として最低限果たすべき責務ですが、病気を診るだけでなく、人を診る、ひいてはその人の人生を診てこそ、本当のプライマリ・ケア医であり、あい友会のAIU CREWなのだと思います。

「私いま、とっても幸せです」
ユウコさんがユウコさんらしい幸せな暮らしを送ることが出来るよう、私も医師として、AIU CREWとして、これからもお手伝い出来ればと思います。
最後までお読み頂き、誠にありがとうございました!

髙橋 秀行
この記事の執筆者
あい駒形クリニック 医師

髙橋 秀行 (たかはし ひでゆき)

院長ブログ

あい駒形クリニックの院長中村がブログをお届けします。

クリニックブログ

あい駒形クリニックのスタッフがブログをお届けします。

データで見る

あい友会の各種データをご覧いただけます。

実績紹介

あい駒形クリニックの診療実績をご紹介します。

メディア掲載

あい駒形クリニックのメディア掲載実績をご紹介します。

電話問い合わせ 問い合わせ