2023.11.14

耳鼻科医師が訪問診療を志したワケ⑤ 〜そして私は訪問診療医になった〜

皆さん、こんにちは。

最近、2023秋冬コレクションを買い漁っています、あい駒形クリニック常勤医の高橋秀行です。

「耳鼻科医師が訪問診療を志したワケ」シリーズも今回で最終回です。

今回はあい駒形クリニックで私が現在携わっている診療の概要と、今後の抱負をお話ししたいと思います。

訪問診療は決断の医療

プライマリ・ケア医として再スタートを切って、ちょうど半年になります。

この半年間は本当に濃厚な時間でした。

毎日早朝から夜遅くまで、初期研修医の頃よりも必死に毎日勉強しています。

医学生時代、研修医時代に内科全般の知識は一通り身に付けており、診療経験もあったのですが、改めてプライマリ・ケア医に求められる知識の幅広さを日々実感しています。

同時に、得られる情報が少なく正確に診断することが難しい状況の中でも、ベストと思われる方針を訪問したその場で決定しなくてはいけない難しさも感じています。

訪問診療とは「決断の医療」と感じます。

当院の守備範囲はとても広い

当院は総合内科のクリニックですので、基本的には内科的な疾患を対象としていますが、内科に限らず様々な疾患を診察しています。

メインは内科疾患

訪問診療の対象となるのは病院への通院が困難な患者さんですので、老衰によるADL低下やパーキンソン病、心不全等を患った方等を多く診察しています。

心不全、高血圧、糖尿病の管理や、高齢者の認知症や不眠・不穏への対応などは、我々訪問診療医が日常的に行う診療です。

また、肺炎や尿路感染等の感染症、食欲低下や嘔吐下痢などに対し、訪問看護師や施設看護師と連携しながら点滴治療を行うこともよくあります。

在宅緩和医療

一方、徐々に訪問診療を必要とされる患者さんが増えているのが、がん終末期の在宅緩和医療かと思います。

当院でも取り組んでいますし、在宅緩和医療を専門にされているクリニックさんもあります。

私が医師になった頃は、それまで治療をしていた基幹病院で最期を迎えられるがん患者さんが多くおられましたが、近年では急性期病床の削減とがん患者さんの増加により、最期の時を緩和病棟や自宅で迎えられる方が多くいらっしゃいます。

こうした背景を受けて、最期の時をご自宅で安らかに迎えて頂くために、当院でも訪問看護師やケアマネジャーをはじめ、多くの職種と連携しながら在宅緩和医療に取り組んでいます。

他領域疾患への対応

一方、内科的な疾患や緩和医療以外にも、様々な領域の疾患について診療を依頼されることがあります。

代表的なのは、皮膚科疾患や整形外科疾患、泌尿器科疾患、婦人科疾患、耳鼻科疾患等です。

専門的な検査機器や設備が必要となる脳外科や整形外科、婦人科等の疾患に訪問診療で対応するには限界があり、専門診療科への受診を提案させて頂くことはありますが、なるべく訪問診療の枠組みの中で完結出来るよう心掛けています。

内科以外の疾患で診察依頼が多いのは、皮膚科疾患です。

皮膚科疾患の場合、視診が重要となるため、訪問診療という設備の制約がある中でも対応しやすいからだと思います。

さらに、あい友会では外部の皮膚科専門医へコンサルテーション可能な体制を整えているため、我々だけで対応が難しいケースでは、専門医の協力を得て診断・治療を行うことが可能です。

このおかげで、総合内科という枠組みにとらわれない診療の質を担保出来ていると思います。

褥瘡診療への取り組み

また、訪問診療の対象となる患者さんの中には寝たきりの方が多くいらっしゃるため、褥瘡(じょくそう)の診療にも日々取り組んでいます。

褥瘡の診療において一番大切なのは、予防することです。

このため、エアマットやクッション等、適切に除圧出来る環境を整えることはもちろん、栄養状態を改善したり、適切な移乗動作を検討したり、常に先手を打つことを心掛けています。

そうした予防策を講じていても出来てしまうのが褥瘡ですので、その際は訪問看護師と連携しながら適切な処置を講じてゆきます。

創部の状態に応じた軟膏の選択や栄養状態の評価、壊死組織の除去(デブリードマン)等を適切なタイミングで行ってゆくことが、訪問診療医に求められます。

私は幸い、研修医時代の形成外科研修で褥瘡治療の基礎をみっちり叩き込んで頂きましたので、当時の経験が今でも大きく活きています。

専門性を活かした耳鼻科往診

最近では、クリニックブログの別シリーズでご紹介している通り、私の専門性を活かした耳鼻科往診も新たに開始いたしました。

往診での耳鼻科診療は設備面で限界があるのですが、耳鼻科に行けず困っている患者さんやご家族、施設の職員さんが喜んでくださると、手探りでも始めてみた甲斐があったと感じています。

最近、耳鼻科用の吸引機器を新たに導入いたしました。

今後も患者さんのニーズに少しでも応えられるよう、努力してゆきたいと思います。

そして私は訪問診療医になった

以上のように、非常に幅広い医療ニーズに応えるべく日々奮闘しているのが、あい駒形クリニックです。

我々は新しいクリニックで、組織としてもまだまだこれからです。

そんな中、訪問診療という制約の中で、100点満点、あるいはそれを超える医療をどうすれば提供出来るのか、耳鼻咽喉科医である私がどうすればプライマリ・ケア医として恥ずかしくない仕事を出来るのか。

日々悩みは尽きず、無力感を味わうこともあります。

患者さんとの別れを繰り返す中で、心が折れそうになることもあります。

それでも、多くのスタッフに支えられ、患者さんに救われながら日々仕事をさせて頂いていることは、大きな喜びとなっています。

本シリーズでお話してきた通り、私は常にチャレンジ精神を大切にしてきました。

そうして紆余曲折を経た結果、今の自分があります。

私の現在地は、あい駒形クリニックです。

信頼出来るスタッフに囲まれて、素敵な患者さんに日々出会える、この場所が私は好きです。

だからこそ、常に全力で、患者さんには全身全霊で、スタッフには感謝全開で、これからも常に前を向いて仕事をしてゆきたいと思います。

10年後、私がどこで何をしているのか、私自身も全く予想がつきません。

でも、自分はそれで良いのだと、最近になって思えるようになりました。

これからも、常に新しいことに挑戦しながら、日々支えてくれる仲間と一緒に成長してゆきたいと思います。

終わりに

クリニックのブログを担当して欲しいと要望を受けて、とりあえず書くことがなかったので始めてみた自分を振り返る本シリーズも、今回で終了となります。

自分で読み返すと恥ずかしくなるような内容にも関わらず、最後までお付き合い頂いた方には、心から感謝いたします。

これからもあい駒形クリニックの「今」をお伝えしてゆきますので、これからもどうぞよろしくお願いいたします!

髙橋 秀行
この記事の執筆者
あい駒形クリニック 医師

髙橋 秀行 (たかはし ひでゆき)

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