2024.04.25

訪問診療、在宅医療に厳しい令和6年度の診療報酬改定

今年度は診療報酬改定の年です。
訪問診療に積極的に取り組んでいる医療機関にとっては、なかなか厳しい改定となりそうです。

改定の前提として話し合われたこと

改定の内容は、厚生労働省や中央社会保険医療協議会(中医協)によって協議されます。
その際、さまざまなデータが用いられるのですが、そこで全国の傾向として、訪問診療の回数が多い医療機関では、自宅よりも施設患者の割合が特に高いこと、看取りや往診対応が少ないこと、同一施設内の患者数が多いほど一人当たりの診察時間が短いことなどが挙げられました。(第577回中医協総会資料 厚生労働省HP

その結果、訪問診療に特化している医療機関に対して、施設患者さんへの診療を抑制するような改定内容となりました。
医療機関の収入の大部分は診療報酬なので、大打撃です。

自宅と施設では訪問診療の介入期間や傾向が異なる

訪問診療の対象は、疾病や傷病によって自分で通院することが困難な人と定められています。
そのような人の生活を支える場として介護施設があることは、疑いようはありません。そのため、自宅だけでなく施設への訪問診療も必然的に発生します。

自分たちの経験から見ると、施設の患者さんは自宅よりも比較的状態が安定しており、看取り件数も少ない傾向にあります。
令和3年8月のクリニック開設以来、約400人の自宅患者さんと、約800人の施設患者さんの訪問診療に関わりました。
患者さんの数は確かに施設の方が多いですが、他方、お看取りした患者さんの数は自宅の方が多く、また訪問診療を行う期間も自宅は施設の1/3ほどでした。
このような傾向を踏まえると、自宅よりも施設の患者さんの割合が必然的に高くなっていきますし、それによって看取りや往診の頻度が変わってくると思われます。(ちなみにあい駒形クリニックでは昨年1年間で1,170件の往診に行きました)

患者さんの対応には診察以外にも多くの時間を要している

同一施設内の患者数が多いほど一人当たりの診察時間が短いことについては、元のデータの患者数自体が少なく、どこまで全体の傾向を反映しているのか少し疑問です。
少なくとも自分たちのこれまでの結果からは、そのような差はありませんでした(同一施設内の患者数にかかわらず、一人当たりの診察時間は平均でおよそ5分でした)。

また、診察するためには看護師さんによる事前の準備が不可欠となります。
持参する物品はあるか、検査や注射の予定はあるか、定期処方は変わりないか、等々、患者さん一人ひとりに対してこれらをチェックするため、診察予定の患者さんが増えれば増えるほど事前準備の時間も増えていきます。
その結果、当然人手も必要となり、人手が増えれば経費も増える、という状況です。

今回の診療報酬改定の背景には、施設の患者さんの訪問診療を多くやっているところは効率的に稼いでいる、というような見方がされたようですが、それ以外にも間接的な負担増を伴っていることを国に認識してもらえたらなと思います。

訪問診療の裾野を広げることが必要では

データで見ると、厚労省や中医協で議論されたような解釈になるのかもしれません。
しかし、データに反映されない地道な努力をしている医療機関も決して少なくないと思います。

高齢化により自宅での介護力の確保は大きな課題となり、施設への入所は必然となっています。
多くの人が自宅での療養や最期を希望しつつも、また同時に家族の負担を憂慮しており、そこには経済力も関わってきます。
在宅医療には、まだまだ社会的に整備すべき課題があり、その中で医療機関は、どこにいても患者さんが望む医療を受けられるよう、訪問診療の裾野を広げていくことが必要ではないでしょうか。

あい駒形クリニックとしては、引き続き施設であれ自宅であれ、ご連絡いただければ対応いたします。今年度もよろしくお願いいたします。

中村 俊喜
この記事の執筆者
あい駒形クリニック 院長

中村 俊喜 (なかむら としき)

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