2025.12.09

高血圧のお話:2025年ガイドライン改訂と在宅医療での降圧治療

皆さん、こんにちは。
夏場は緑だった髪の色もすっかり紅葉して紅くなりました、あい駒形クリニックの高橋秀行です(注:白髪染めの話です)。
今日は、2025年の高血圧治療ガイドライン改訂で話題となっている“降圧目標値の変更”について、そして私が普段携わっている在宅医療での高血圧治療の考え方について、私見を交えてお話したいと思います。

2025年高血圧管理・治療ガイドラインでの重要ポイント

2025年版の「高血圧管理・治療ガイドライン(日本高血圧学会)」では、これまでよりも個別化医療が重視された改訂が行われました。
これまでは降圧目標値が年齢と合併症を基準に設定されていましたが、新しいガイドラインでは、すべての成人で以下の通り統一されました。

診察室血圧:130/80 mmHg 未満
家庭血圧:125/75 mmHg 未満

さらに、75歳以上の高齢者では、ADL(Activities of Daily Living)に応じた降圧目標が明確化されました。

カテゴリー1:外来通院可能な高齢者
降圧目標:130/80 mmHg 未満

カテゴリー2:外来に付き添いが必要な高齢者
降圧目標:収縮期血圧140 mmHg 未満

カテゴリー3:外来通院も困難なADLの低下した高齢者
降圧目標:収縮期血圧150 mmHg 未満

カテゴリー4:終末期
降圧目標:個別に対応

在宅医療を行っている立場として、今回の改定は非常に納得感があります。
老いと年齢はゆるやかに比例するものの、個人差が非常に大きいからです。
70歳台でも上記のカテゴリー3の方が多くいらっしゃる一方で、100歳台でもカテゴリー1、カテゴリー2の方も多くおられます。
そうした「老いの多様化」が、今回の改定には非常に的確に反映されたと感じています。

在宅医療では“外来と同じ”ではうまくいかない理由

在宅医療で高血圧治療を行っていると、外来管理とは異なるポイントが浮き彫りになります。

血圧は「生活の中で」決まる

在宅患者さんは

など、血圧に影響する因子が外来よりも多彩です。

フレイル・認知症患者では「下げすぎ」が害になる

在宅医療では起立性低血圧、食欲低下、脱水からの急性腎障害など、降圧しすぎることでトラブルが起きることは珍しくありません。
特に高齢者の場合、転倒・ふらつきのリスクは極めて重要です。
2025年のガイドライン改定において、ADLの低下した高齢者で降圧目標を高めに設定しているのは、非常に理にかなっていると思います。

在宅医療における血圧管理 ―私の工夫―

在宅医療では、患者さんの全身状態や生活背景を踏まえた調整が何より重要になります。
ここでは、私が日々感じている在宅血圧管理の実践ポイントをいくつか紹介します。

合併症に合わせた降圧薬の選択が重要

高齢者では

などを併せ持つ方が多く、“血圧さえ下がれば何でも良い”とはいきません。
特に近年は、

といった臓器保護作用が重視されています。

降圧薬を処方する際は、こうした合併症の評価に加えて、血液中のカリウムなどの電解質も考慮しながら、全身状態に応じた処方設計を心がけています。

降圧目標は“全身状態”に応じて柔軟に設定する

今回の2025年ガイドライン改定で明確化された「ADL別の降圧目標」は、在宅医療において非常に理にかなっています。
在宅医療では、患者さん一人ひとりのADLを見極めるとともに、

といった生活の変化をきめ細かく評価し、降圧目標をその都度調整する柔軟さが求められます。
ガイドラインの基準値にこだわりすぎず、「この人が安全に生活できるか」を判断基準にしています。

血圧の日内変動を考慮し、服薬タイミングを調整する

高齢者の血圧は、環境・体調・脱水・睡眠リズムに大きく左右されるため、日内変動が非常に大きいのが特徴です。

このため、薬の調整では「どの薬を増やすか」より「いつ飲むか」が重要になることもあり、血圧の日内変動や生活リズムに沿った薬物療法が効果的です。
特に高齢者は薬の感受性が高いため、少量調整・タイミングの工夫だけで症状が改善することが多く、過度な多剤併用を避ける利点にもなります。

以上が、在宅医療の現場で私が重視している血圧管理の主なポイントです。
外来受診とは違う“生活の中の医療”だからこそ、患者さん一人ひとりの状態に丁寧に合わせた血圧管理が求められると日々実感しています。

患者さんに寄り添いながら無理なく続けられる方法を

在宅医療の高血圧治療は、その人の生活に寄り添いながら、無理なく続けられる方法を一緒に探す作業です。
ガイドラインが示す方向性とうまく組み合わせながら、これからも患者さん一人ひとりの生活を守る血圧管理を心がけていきたいと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!

髙橋 秀行
この記事の執筆者
あい駒形クリニック 副院長

髙橋 秀行 (たかはし ひでゆき)

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