皆さん、こんにちは。
髪をカーキに染めたらほぼ黒でした、あい駒形クリニックの高橋秀行です。
本日は、発熱のお話です。
ヒトが発熱する原因
訪問診療に携わる中で、様々な理由で臨時往診のご依頼をいただきますが、おそらく一番相談が多い症状が、発熱です。
この原稿を書いているまさに今も、発熱の相談に対応をしているところです。
発熱とはそれほど、プライマリ・ケアとは切っても切れない症状です。
ウイルス感染症による発熱

なぜ、ヒトは発熱するのでしょうか?
昨今、熱が出た時に多くの方が真っ先に思い浮かべるのは、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)だと思います。
2024年10月現在でも、COVID-19は鎮静化する気配がなく、日々新規患者が発生しています。
他にも、インフルエンザや手足口病、風邪など、ウイルス感染症は発熱の多くの割合を占める代表的な疾患だと思います。
ウイルスは生物と無生物の間とも言える病原体で、RNA/DNAとタンパク質の塊です。
物質なので単独で増えることは出来ず、生物の細胞に入り込んで間借りすることで増殖します。
ウイルス感染症の場合、COVID-19やインフルエンザのように抗ウイルス薬が使用可能な疾患と、風邪のように対症療法のみの疾患があります。
細菌感染症による発熱
一方で、ウイルスと並んで感染症の原因となる病原体が、細菌です。
細菌も多くの種類があり、ウイルスほど名前が知られているものは多くありませんが、食中毒を引き起こす黄色ブドウ球菌や大腸菌などは、耳にする機会が多いと思います。
細菌は単細胞生物であり、ウイルスと異なり単独で増殖することが出来ます。
常在菌といって、ヒトを含む生物の身体には多くの種類の細菌が定着していますが、何かのキッカケで感染が成立すると、ありとあらゆる臓器で様々な問題を引き起こします。
細菌に対しては100年近く前にフレミングがペニシリンを発見してから現在に至るまで、抗菌薬開発の長い歴史があり、非常に多くの種類の薬剤が存在します。
発熱しない感染症にも注意
では、発熱=感染症なのでしょうか。
確かに、プライマリ・ケアで出会う発熱の大部分は感染症だと思います。
特に、当クリニックのような訪問診療を行う施設の場合、患者さんの多くが高齢者であるためか、感染症、特に細菌感染症の割合は高いように感じます。
しかし一方で、高齢者の感染症の場合、しばしば発熱しない場合があります。
熱が高い=重症、というイメージを持たれる方は多いと思いますが、むしろ本当に怖いのは敗血症などの重症感染症で熱が出ない場合です。
集中治療室に入室した敗血症患者を調べた研究では、体温が1℃低下する毎に死亡率が5%上昇し、37℃未満では死亡率が36%であったという結果が報告されているほどです。
「発熱がないから大丈夫」ではなく、時には「発熱がないけど大丈夫?」と考えることも必要なのです。
感染症以外の発熱原因
少し話が逸れましたが、発熱=感染症か?という問いについて、発熱しない感染症もあるため注意が必要というお話をしました。
続いて感染症以外の発熱の原因を挙げると、医師がまず思い浮かべるのは、悪性腫瘍と膠原病(リウマチ性疾患)です。
一般的には、発熱する期間が長くなるほど、感染症以外の疾患の可能性が高くなります。
悪性腫瘍に伴う発熱の場合は、いわゆる白血病といった血液腫瘍やリンパ腫に伴う発熱は高い頻度で認められますが、肝細胞癌や腎癌に代表されるような固形腫瘍に伴う発熱も珍しくありません。
膠原病(リウマチ性疾患)に伴う発熱の場合、成人スティル病や関節リウマチ、リウマチ性多発筋痛症、血管炎などが有名ですが、他にも非常に多くの疾患があり、その鑑別はしばしば簡単ではありません。
他にも、薬剤性の発熱や甲状腺炎、脳出血など、発熱を来す疾患は枚挙に暇がありません。
発熱の相談を受けたとき、訪問診療医が考えること
長くなりましたが、訪問診療で発熱の相談を受けた場合、医師がまず考えるのは昨今ではCOVID-19か否かです。
同時に他の感染症の可能性を考えますが、特に高齢者に多い感染症として肺炎と尿路感染症の可能性は必ず検討します。
ここまでで思い当たる原因がなかった場合、訪問診療という検査がすぐに出来ない状況で、診断し治療方針を決めるには、問診と身体所見に頼るしかありません。
発熱はどのくらいの期間続いているのか、腹痛や腰痛、呼吸苦などの自覚症状あるか、皮膚の変化や腫れ、関節の運動制限等はあるか、痰は増えているか、尿の臭いに変化はないか、等々・・・情報を集められるだけ集めると、大抵は何かしらのヒントを得ることが出来ます。
こうして情報を集めたうえで、細菌感染症を想定して抗菌薬を使うのか否か、が大きな分岐点になります。
使う場合は、全身状態を考慮して、内服薬にするのか、注射薬(点滴)にするのかを決め、注射薬にする場合は必要に応じて訪問看護師と連携しながら治療を行います。
抗菌薬を使わない場合は、診断結果に応じて、抗炎症作用のある薬剤や解熱剤を処方し、その後の経過で抗菌薬が本当に不要なのかを注意深く判断してゆくことになります。
採血や全身CTを用いてすぐに発熱の原因精査が出来る病院と異なり、問診と身体所見だけで発熱の原因を特定するのは、医師の知識と経験を総動員して行う非常に難しいプロセスです。
このため100%正しい診断を行うには限界があり、細菌感染症は否定的=抗菌薬不要 と自信を持って言えないケースがあるのも事実です。
一方で、全身状態が急激に悪化しやすい高齢者の場合、抗菌薬を処方しないことのリスクもまた、十分に検討する必要があります。
このため、発熱→細菌感染→抗菌薬という単純なフローではなく、得られた情報を総合的に解釈したうえで判断することが、在宅医療の現場で求められています。
今後、冬の到来とともに感染症が増えてくることが予想されますので、当クリニックとしても臨時往診にしっかり対応してゆきたいと思います。

あい駒形クリニックの訪問診療解説シリーズ、今後も続けてゆきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
<参考文献>
青木洋介.発熱の診かた・考えかた・向き合いかた.メジカルビュー社,2022.
Sunden-Cullberg J, et al. Am J Emerg Med 2017; 35: 1755-1758.




