皆さん、こんにちは。
時差ボケに弱い、あい駒形クリニックの高橋秀行です。
本日は、心不全のお話です。
心不全とは
「心不全」という言葉を、聞いたことはあるでしょうか?
日本循環器学会の急性・慢性心不全診療ガイドラインにおいて心不全とは「なんらかの心臓機能障害,すなわち,心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果,呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し,それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群」と定義されています。
もう少し分かりやすく表現すると、全身に血液を送り出すポンプである心臓の働きが低下することにより身体の働きに不都合が生じた状態、と言えます。
心不全の歴史|フラミンガム研究
心不全という病態は、McKee PAらのフラミンガム研究(1971年)において、はじめて定義されました。
本研究は、米国フラミンガム町において開始された大規模疫学研究で、心不全という病態をはじめて定義しただけでなく、高血圧や脂質異常症、喫煙など、現在では心血管病のリスクとして広く認知されている因子をはじめて明らかにした、非常に有名な疫学研究です。
フラミンガム研究では、自覚症状や身体所見、胸部X線等の所見を組み合わせることで心不全という病態を定義することが提唱されました。
それから50年以上の月日が経ち、心臓超音波検査、心臓カテーテル検査、心臓シンチグラフィー、心臓MRI、BNP・NT-proBNP等の血液検査など、心臓の検査の飛躍的な進歩により心不全の詳細な病態が明らかになりました。
これにより、従来より考えられていた心臓の収縮機能低下に伴い十分な血液を身体に送り出せなくなる心不全(HFrEF)に加えて、心臓の壁が厚くなる・硬くなることで心臓の拡張機能、つまり全身から戻ってきた血液を受け入れる機能が低下する心不全(HFpEF)も存在することが分かりました。
現在では、心不全の種類によって推奨される治療法も異なっており、心不全の病態を適切に評価することが必要不可欠です。
訪問診療と心不全
さて、当院の訪問診療の対象となる患者さん、すなわち診療所や病院へ受診することが困難な患者さんの中には、心不全を患ってらっしゃる方が多くおられます。
大きな理由としては、当院の患者さんの多くが高齢者であることが挙げられます。
心不全は後期高齢者において有病率が上昇する代表的な疾患であり、高齢者人口の増加に伴い心不全患者も今後大幅に増加すると言われており、心不全パンデミックと呼ばれています。
こうした心不全パンデミック時代では、循環器内科専門医だけでなく、我々のようなプライマリ・ケア医(総合診療医)にも、心不全の病態を適切に評価し、正しい治療方針を選択する能力が、今後一層求められます。
プライマリケア医が心不全を診断・治療するためのポイント

では、我々プライマリ・ケア医が心不全を正しく診断し治療するためには、いったいどうすればよいのでしょうか。
ポイントは
・心臓に何が起こっているか
・その結果、身体に何が起こっているか
を正しく評価することです。
心臓に何が起こっているかを考える
「心臓に何が起こっているか」を考えるうえで大切なのは、上述した心不全の病態を正しく評価することで、適切な治療法を選択することです。
また、心不全の原因として狭心症や心筋梗塞等の有無を評価することも大切です。
多くの患者さんは、当院へ紹介になる前に専門医療機関で詳しい検査を受けられ、心不全の病態や適切な治療法について評価されているため、当院で新たに心不全を診断・治療することはあまりありません。
しかし急に病状が変化した際に、心電図や心臓超音波検査などのベッドサイドで施行できる検査用いて簡単な評価を行い、病院へ紹介が必要かどうかの判断を行うことは、我々プライマリ・ケア医の腕の見せどころといえます。
身体に何が起こっているかを評価する
また「その結果、身体に何が起こっているか」を正しく評価するには、自覚症状の問診や身体所見の診察が重要になってきます。
心不全の2つの病態、すなわち心臓が十分な血液を送り出すことが出来ずに生じる血液不足と、心臓が十分に血液を受け入れることが出来ずに生じる全身の血液過剰、いずれの異常が全身で起こっているのかを見極めることが大切です。
具体的には、息切れ、倦怠感、食欲低下などの自覚症状、体重の変化や末梢の冷え、むくみの状態、脈拍・血圧などの身体所見、血液検査の結果などを見極めながら、内服薬の調節といった状態に見合った治療選択を行うことが大切です。
当院の医師のほとんどは循環器内科専門医ではありませんが、プライマリ・ケア医として上記のような事を意識しながら、心不全を患っている患者さんが、自宅や入居施設でも出来るだけ負担なく生活を送ることが出来るよう、日々診療を行っています。
今後、心不全を患う患者さんが増えてゆくなかで、より質の高い在宅医療を提供出来るよう、日々の研鑽に努めてゆきたいと思います。

あい駒形クリニックの訪問診療解説シリーズ、今後も続けてゆきますので、どうぞよろしくお願いいたします。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました!
<参考文献>
N Engl J Med. 1971 Dec 23;285(26):1441-6.
品川 弥人(2022).プライマリケアで診る慢性心不全.




